11日間連続勤務のあとの3日間の休日。この1週間は実にアクティブであった。
ー 看護婦さんに「あなたは人をなだめる(落ち着かせる)のが上手だから」と指名されて、鼻から胃の栄養チューブを通すお手伝いを2回した。一人は目も半分見ていないような どんよりとした表情の人(♀)だったんだけど、手を握ったら ギューッと握り返してきて、終わった時に「やったね、もう終わりだよ」と言ったら にこっと笑ってくれた。こういう笑顔の価値☆彡 もう一人は80歳位の人(♀)で やっぱりチューブを通す位だから 同じ様な状態の人だったんだけど、終わってからも暫くさすって慰めてあげていたら、いきなり「ママ、ママ」と泣きながら縋りついてきた。 感染症の疑いのあった人(♂)は 元々99%白だったんだけど、晴れて(隔離)解除になった。片足しかなくて、かなり意思疎通が難しく、機嫌が悪いと狂暴になるおじいさん。何故か私のことは気に入ってくれていて、薬もちゃんと飲んでくれるのはいいんだけど、手を握って放さない💦
半分正気じゃない人(・・・って日本語にすると変だねえ)は、手を握ると安心するみたいで ギューッとしがみついて離さない人が多い。淋しいんだね。例の痛み止めが効かない人(♀)も、手を握ってさすってあげていたら「痛くなくなってきた。魔法だ! 今なら眠れる」と喜んでくれた。モルヒネシロップを飲んで、更に痛いときは注射もするんだけど、それ迄 人の顔さえ見れば注射をせがんでいたのが その日は注射なしで眠れた。私のうぬぼれで言えば、その日から私の勤務中には一本も注射を必要としなくなった。手術、リハビリの為に転院で、お別れの時に「これでアイスでも食べて」と20マルクくれた(チップ)。要らないって言ったんだけど、だんなさんと二人で「痛みから解放されたのは 今迄病院を転々としてきて ここが初めてだったから」と。「あなたがさすってくれると 心が落ち着いて 痛みが消えた」って。最後に「抱きしめさせて」と言われて 抱き合ってお別れした。手術が成功するといいんだけど・・・。患者さん達から チョコレートだの桃だの 「おいしかったから」と半分食べて残しておいてくれたパンだのもらったり、「退院したら家へ遊びに来てね」なんて言われると、疲れが吹き飛ぶ。
ー 寮で顔見知りだった日本人の女の子が帰国するお別れパーティーによばれていって、久々に日本食を口にした。冬にまたちょっと来るということで、荷物を2箱預かってあげるお礼にと電気炊飯器をもらってしまった。お米を入手せねば。
ー N先生の教え子でUlmにやってきたYさん(♂)がこの週末訪ねて来た。ポスドクだからてっきり歳上と思っていたら 信大同期だった。同級生がポスドクになる歳なのね・・・💧 初めて私もTübingen観光をした。いい街だなー、と改めて。
ー 同じ実習生仲間で素晴らしい友達ができた。アナといって、まだ入学していなくて 来期から医学部入学予定。なんとAbi 1.0。これは日本でいうオール10位で、ほぼパーフェクトの最高点。Tübingenが第一希望で出してあるというから これは確実に通る。ハノーファー出身。活発で 人を笑わすのが上手で、自分も楽しむことを知っていて、でも内面は凄く深く考えている。私をパワーアップ&レベルアップした感じ。いいなあ。かなわない。夜一緒に食事に出掛けてから すっかり意気投合して 踊りに行ったりした。私がお年寄りをどうやって慰めているのか、とか どうやって例の患者さんんの痛みをとったか、とか詳しく聞かれた。日本の社会とか若者の現状とか政治も。「幸子は人にポジティヴなものを与えることができる」と言われて嬉しかった。彼女は医学部に入ることに不安を感じていて、「私にとって勉学は余りにも安易で、勉強する→いい成績をとる という単純な連鎖だから 楽しめるか心配」などという恐ろしい事を言っている。でも、今の実習ぶりをみていると、素敵なお医者さんになると思う。こういういい友達ができると、うーー、私も頑張らなくっちゃ、と思う。今迄 周囲にこういう「凄いなーー!」と思えるような友達、ライバルはいなかったのが、ドイツに来てみたら 一人、また一人と出会うから嬉しい。やっぱり 何を勉強するか、だけじゃなくて 誰と、というのは ものすごく重要だと思う。
最近試験も済んでストレスがなくなって、病院でおいしい食事をたっぷり得て、何となく頬がまるくなってきたような・・・💧 通勤に歩くし、勤務中も歩いたり力仕事だから健康的。
病棟のキッチンで、向かって右がアナ。左はチェコからの実習生で、時々キッチンで朗々と歌っていた。
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20マルクって、当時のチップとしては破格で、学生には大金です。
食べかけのものは、勿論後でこっそり処分するしかないので、固辞するんだけど。
当時の手帳を見ると、アナと三晩連続で待ち合わせして遊びに行っている。
初日は街をブラブラして、アフリカ料理(レストランでなく、何かの集まりで、半分ボランティアの持ち寄りみたいなので、安く食べられた)。次の日は68年代パーティー(その頃の音楽ばかりかけるディスコ)。その次の日は、女性限定ディスコ。
アナは実習のために初めてテュービンゲンに来たのに、情報収集が凄いし、街でも色んな人に話しかけて、すぐ友達になっちゃう。夕方店仕舞いしている八百屋スタンドの人に「捨てちゃう野菜があったら、くれない?」とか。それで断られても、全然めげない。
今でこそAbi 1.0もそんなに珍しくないけれど、当時は1.0なんて、私は聞いた事なかったよ。
1学期間、勉強しかせずに生きてきて、アナに「そんな事じゃダメ!」と、あちこち連れて行って貰って、その楽しさに目覚めた。